今回のテーマは、「遺産分割前の預貯金の払戻し」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問45》

《問45》 下記の〈条件〉に基づき、長男Bさんが、家庭裁判所の審判や調停を経ることなく、遺産分割前に単独で払戻しを請求することができる預貯金債権の上限額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、妻Aさんは、被相続人の相続開始前に死亡している。また、記載のない事項については考慮しないものとする。

1) 150万円
2) 270万円
3) 300万円
4) 470万円

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)

正解:2

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

家庭裁判所の判断を経ないで払戻しを受けることができる額
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時点での残高の3分の1に法定相続分を乗じた額の払戻しを受けることができる。(民法909条の2)
なお、一金融機関当たりの上限額は150万円である。(複数の金融機関に被相続人の口座がある場合はその分だけ上限額が増える。)

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

民法・e-Gov法令検索

X銀行
(600万円+1,500万円) × 3分の1 × 2分の1 = 350万円
→1金融機関当たりの上限額の150万円を上回るので、払戻しを受けることができるのは、150万円となる。①

Y銀行
720万円 × 3分の1 × 2分の1 = 120万円 ②

① ∔ ② = 270万円

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