今回のテーマは、「養子に関する記述」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問44》

《問44》 養子に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、特別養子縁組以外の縁組による養子を普通養子といい、記載のない事項については考慮しないものとする。

1) 特別養子縁組は、特別養子適格の確認の審判と特別養子縁組の成立の審判により成立するが、特別養子適格の確認の審判の申立ては、児童相談所長が行わなければならず、養親となる者が申立てをすることはできない。
2) 特別養子の養親は、配偶者を有する者で、夫婦の一方が満25歳以上、かつ、夫婦のもう一方は満20歳以上でなければならないが、普通養子の養親は、満20歳以上であれば配偶者がいない者でもなることができる。
3) 普通養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有するとともに、実親との親族関係も継続するため、実親に対する相続権も有する。
4) 子を有する者を普通養子とした後、その普通養子が死亡した場合において、普通養子の死亡後に養親の相続が開始したときは、普通養子の子は、普通養子の相続権を代襲しない。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。

1 誤り。

家庭裁判所は、民法に定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(特別養子縁組)を成立させることができる。(民法817条の2第1項)

なお、令和元年(2019年)に特別養子制度の見直しが行われた。

児童相談所長は、児童について、家庭裁判所に対し、養親としての適格性を有する者との間における特別養子縁組について、家事事件手続法に規定する特別養子適格の確認を請求することができる。(児童福祉法33条の6の2第1項)

したがって、特別養子適格の確認の審判の申立ては、児童相談所長が行わなければならず、養親となる者が申立てをすることができないわけではない。

2 正しい。

特別養子の養親は、配偶者を有する者で、夫婦の一方が満25歳以上、かつ、夫婦のもう一方は満20歳以上でなければならない。(民法817条の4)
そして、20歳に達した者は、養子をすることができる。(普通養子)(同792条)
なお、成年年齢の引き下げを受けて、「20歳に達した者」と改正されている。

3 正しい。

子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。(普通養子)(民法809条)

したがって、普通養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有する。
そして、実親子関係は従来通り存続する。すなわち、実親子関係に基づく相続や扶養の権利義務関係は、養子となった後も変わらない。

4 正しい。

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。(民法727条)
すなわち、養子縁組の前に養子に発生している身分関係は、養親には関係ない。
したがって、子を有する者を普通養子とした、その普通養子が死亡した場合において、普通養子の死亡後に養親の相続が開始したときは、普通養子の子は、普通養子の相続権を代襲しない。(同887条2項ただし書)