今回のテーマは、「居住者に係る所得税の配当控除」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問27》
《問27》 居住者に係る所得税の配当控除に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1) 公募株式投資信託の分配金に係る配当所得は、確定申告により総合課税を選択することで、配当控除の適用を受けることができる。
2) 配当控除の控除額を計算する際の配当所得の金額は、株式等を取得するために要した負債の利子がある場合、配当金額から当該負債の利子の額を控除した金額である。
3) 配当控除の控除額を計算する際の配当所得の金額は、配当所得の金額が他の所得の金額と損益通算される場合、損益通算する前の配当所得の金額となる。
4) 課税総所得金額が1,000万円を超える場合、配当控除の控除額は、当該配当所得の金額のうち、当該課税総所得金額から1,000万円を控除した金額に達するまでの金額については10%を、その他の金額については5%をそれぞれ乗じて計算した金額の合計額となる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
公募株式投資信託とは
不特定多数の投資家に向けて募集する公募投資信託のうち、約款に株式投資ができると記載してあるもの。実際には債券のみを投資対象としていても、約款に株式投資ができる旨が記載してあれば、税制上は公募株式投資信託となる。一方、約款に株式には投資しない旨が記載されており、債券を中心に運用する公募投資信託を公募公社債投資信託という。
野村証券のWebサイト「証券用語解説集」
公募株式投資信託の収益分配金(普通分配金)は上場株式の配当と同じ取り扱いの配当所得となっている。税金は源泉徴収され、確定申告は不要となるが、総合課税として確定申告をすることにより、配当控除の適用を受けられる。
2 正しい。
配当控除の控除額を計算する際の配当所得の金額は、株式等を取得するために要した負債の利子がある場合、配当金額から当該負債の利子の額を控除した金額である。
3 正しい。
配当控除の控除額を計算する際の配当所得の金額は、配当所得の金額が他の所得の金額と損益通算される場合、損益通算する前の配当所得の金額となる。
4 誤り。
課税総所得金額が1,000万円を超える場合の配当控除額
(1,000万円超の部分に含まれる配当所得の金額)×5% + その他の所得×10%
(所得税法92条)e-Gov法令検索
例えば、課税総所得金額が1,100万円、この中に利益の配当が150万円含まれている場合、
配当控除は、
(1,100万円-1,000万円)×5% + {150万円-(1,100万円-1,000万円)} ×10% = 10万円
となる。
したがって、本肢は、正しくは、「当該課税総所得金額から1,000万円を控除した金額に達するまでの金額については5%を、その他の金額については10%をそれぞれ乗じて計算した金額の合計額となる。」となる。