今回のテーマは、「被保険者の資格喪失後の保険給付」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問2》

《問2》 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者の資格喪失後の保険給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。

1) 資格を喪失した際に傷病手当金を受給している者は、傷病手当金の支給期間が資格喪失前の期間と通算して1年6カ月になるまで、傷病手当金を受給することができる。
2) 資格を喪失した際に出産手当金を受給している者が、資格喪失後に配偶者が加入する健康保険の被扶養者となった場合、出産手当金を受給することができる期間内であっても、出産手当金は支給されない。
3) 被保険者であった者が資格喪失の日から6カ月以内に出産をした場合、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金を受給することができる。
4) 資格喪失後に傷病手当金を受給していた者が、当該傷病手当金を受給しなくなった日から3カ月以内に死亡し、その者により生計を維持されていた者が埋葬を行った場合、埋葬料が支給される。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

また、本テーマはこれまでにも取り上げている。

FP2級の過去問を解こう(2023年5月)「健康保険の保険給付」

1 正しい

我が国の公的医療保険制度は、職域保険の「被用者医療保険」と地域保険の「国民健康保険」の二本柱の仕組みである。また、原則として、75歳以上の人は後期高齢者医療制度の対象とされる。

なお、被用者とは、「雇用されている者」である。

被用者医療保険制度の代表なものは、健康保険である。これには、保険者の違いで、「組合管掌健康保険」と「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」がある。

協会けんぽの根拠法令は、健康保険法(大正11年法律第70号)である。

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。(健康保険法104条)

そして、この場合、傷病手当金が、資格喪失前の期間と通算して1年6カ月になるまで支給される。

2 誤り。

肢1で解説したように、出産手当金についても原則、出産日(出産予定日)以前42日、出産日翌日以後56日の範囲内で、継続給付が受けられる。

なお、資格喪失後に配偶者が加入する健康保険の被扶養者であるか否かは関係ない。

3 正しい。

1年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後6月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。(健康保険法106条)

4 正しい。

資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受ける者が死亡したとき、当該保険給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後3月以内死亡したとき、又はその他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3月以内死亡したときは、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。(健康保険法105条)