今回のテーマは、「生命保険会社の健全性・収益性」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問10》
《問10》 生命保険会社の健全性・収益性に関する指標等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 責任準備金の積立方式のうち、チルメル式では、事業費を初年度に厚くし、初年度以降、一定の期間で償却すると想定し、責任準備金を計算する。
2) 基礎利益は、保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であり、経常利益に有価証券売却損益等の「キャピタル損益」を加えて、危険準備金繰入額等の「臨時損益」を除いて算出される。
3) EV(エンベディッド・バリュー)は、保険会社の企業価値を表す指標であり、貸借対照表などから計算される「修正純資産」と保有契約から将来生じる利益の現在価値である「保有契約価値」を合計して算出される。
4) 実質純資産額は、有価証券や有形固定資産の含み損益等を反映した時価ベースの資産の合計から、価格変動準備金や危険準備金等の資本性の高い負債を除いた負債の合計を差し引いて算出される。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
純保険料と附加保険料
契約者が支払う保険料は、保険金支払の財源となる純保険料と、私的保険制度を運営・管理していくために必要な経費に充てる附加保険料からなる。
責任準備金
純保険料のうち、将来の保険金、給付金を支払う財源として積み立てておく準備金を責任準備金という。
責任準備金の積立方式
責任準備金の積立方式には、平準純保険料式とチルメル式の2種類がある。原則的には、平準純保険料式による。
責任準備金の積立方式のうち、チルメル式では、事業費を初年度に厚くし、初年度以降、一定の期間(チルメル期間)で償却すると想定し、責任準備金を計算する。
2 誤り。
基礎利益は、保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であり、経常利益から有価証券売却損益等の「キャピタル損益」と危険準備金繰入額等の「臨時損益」を除いて算出される。
3 正しい。
EV(エンベディッド・バリュー)は、保険会社の企業価値を表す指標であり、貸借対照表などから計算される「修正純資産」と保有契約から将来生じる利益の現在価値である「保有契約価値」を合計して算出される。
EV(エンベディッド・バリュー) = 修正純資産 + 保有契約価値
4 正しい。
実質純資産額は、有価証券や有形固定資産の含み損益等を反映した時価ベースの資産の合計から、価格変動準備金や危険準備金等の資本性の高い負債を除いた負債の合計を差し引いて算出される。
実質純資産額がマイナスとなり、実質的な債務超過と判断されると、業務停止命令の対象となる。