今回のテーマは、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「マンション建替え円滑化法」という)」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問題37

《問37》 マンションの建替え等の円滑化に関する法律に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1) マンションが外壁の剥落より周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして一定の基準に該当する場合であっても、マンションが地震に対する安全性に係る建築基準法の規定等に適合している場合は、特定要除却認定の申請をすることはできない。
2) 特定要除却認定を受けたマンションを含む団地の場合、団地建物所有者集会において、特定団地建物所有者および議決権の各5分の4以上の多数により、当該特定団地建物所有者の共有に属する団地内建物の敷地を分割する旨の決議をすることができる。
3) マンションおよびその敷地の売却決議に反対した区分所有者は、マンションおよびその敷地の売却を行う組合に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で買い取るよう請求することができる。
4) 要除却認定マンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定規模以上の敷地面積を有し、交通上、安全上、防火上および衛生上支障がなく、かつ、市街地の環境の整備・改善に資するものについては、特定行政庁の許可により建築基準法による建蔽率制限が緩和される。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1) 誤り。

マンションの管理者等は、特定行政庁に対し、そのマンションを除却する必要がある旨の認定を申請することができる。(マンション建替え円滑化法102条1項)
そして、外壁等が剥離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして所定の基準に該当すると認められるとき、特定行政庁は、その旨の認定をする。(同102条2項3号)

なお、「マンション建替え円滑化法」は「建築基準法」の特別法に該当するので、優先して適用される。

2) 正しい。

特定要除却認定を受けた場合、団地建物所有者集会において、特定団地建物所有者および議決権の各5分の4以上の多数により、当該特定団地建物所有者の共有に属する団地内建物の敷地を分割する旨の決議(敷地分割決議)をすることができる。

3) 誤り。

マンション敷地売却組合は、組合の設立の認可の公告の日から2か月以内に、マンション敷地売却に参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含み、その後にマンション敷地売却合意者となったものを除く。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる
なお、この売渡請求は、正当な理由がない限り、マンション敷地売却決議の日から1年以内にしなければならない。
(マンション建替え円滑化法124条)

従来、マンションを除却して、その敷地を売却するには、民法の規定により、「共有者全員の同意」がなければならず、そこで、「特定要除却認定マンション」では、決議要件を緩和して、「マンション敷地売却決議」の制度が設けられた。
多数決なので、これに賛同しない者は当然出てくるわけだが、その者からの買取請求を待っていては、「マンション敷地売却」は進まない。そこで、マンション敷地売却組合からの売渡請求となったのである。

4) 正しい。

その敷地面積が政令で定める規模以上であるマンションのうち、要除却認定マンションに係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)、容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。)及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率は、その許可の範囲内において、緩和される。(マンション建替え円滑化法105条)

したがって、建ぺい率ではない。