今回のテーマは、「各種信託商品の一般的な特徴」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問17

《問17》 各種信託商品の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1) 後見制度支援信託は、被後見人の生活の安定に資すること等を目的に設定される信託であり、信託契約の締結、信託の変更・解約等の手続があらかじめ家庭裁判所が発行する指示書に基づいて行われ、信託財産は金銭に限定されている。
2) 暦年贈与信託は、委託者が拠出した信託財産のうち毎年一定額を受益者に給付する旨の贈与契約書を作成して設定される信託であり、年間給付額は贈与税の基礎控除額である110万円が上限となる。
3) 生命保険信託は、委託者が保険会社と締結した生命保険契約に基づく保険金請求権を信託銀行等に信託し、委託者の相続が開始した際には、信託銀行等が保険金を受け取り、受益者に対してあらかじめ定められた方法により給付する信託である。
4) 遺言代用信託は、委託者の生存中は委託者が受益者となり、委託者の死亡後は委託者があらかじめ指定した者が受益者となる信託であり、あらかじめ指定した者に対しては、一時金による給付のほか、定期的に一定額を給付することも可能である。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 正しい。

後見制度支援信託は,本人の財産のうち,日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し,通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことで(成年後見と未成年後見において利用することができる。保佐,補助及び任意後見では利用できない。),本人の財産を適切に保護するための方法の一つである。
 信託財産は,元本が保証され,預金保険制度の保護対象にもなる。後見制度支援信託を利用すると,信託財産を払い戻したり,信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書を必要とする。
(参考)裁判所のホームページ

2 誤り。

暦年贈与信託には、贈与税の基礎控除額である110万円の上限はない。したがって、贈与税の年間基礎控除額である110万円を超える金額でも贈与できる。
ただし、110万円を超える場合は贈与税の申告や納付が必要になる場合がある。
(参考)三井住友信託銀行のホームページ

3 正しい。

生命保険信託は、生命保険契約の死亡保険金請求権を受託者(信託銀行等)へ信託して、委託者が亡くなった場合の死亡保険金を、あらかじめ指定された人に、指定された支払期間、方法で支払う信託商品である。
(参考)みずほ信託銀行のホームページ

4 正しい。

遺言代用信託とは、本人がご自身の財産を信託して、生存中は本人を受益者とし、亡くなった後は、本人の配偶者や子どもなどを受益者と定めることによって、本人が亡くなった後における財産の分配を信託によって実現しようとするものである。
(参考)一般社団法人 信託協会のホームページ