今回のテーマは、厚生年金保険の被保険者」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問題4
《問4》 厚生年金保険の被保険者に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 常時従業員を使用する法人事業所は、業種にかかわらず、厚生年金保険の適用事業所となり、原則として、その法人の70歳未満の代表者は被保険者となる。
2) 常時5人以上の従業員を使用する法定業種の個人事業所は、厚生年金保険の適用事業所となり、原則として、その個人事業所の70歳未満の事業主は被保険者となる。
3) 2カ月以内の期間を定めて適用事業所に使用される者であって、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものは被保険者とならないが、定めた期間を超えて引き続き使用されることが見込まれるようになった場合、当初使用された日に遡って被保険者となる。
4) 特定適用事業所以外の適用事業所において、1週間の所定労働時間が同一の適用事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満であっても1カ月の所定労働日数が4分の3以上ある労働者は被保険者となる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければいけません。
令和4年10月から【法律・会計にかかる業務を行う士業】に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、強制適用事業所となりました。
(参考)日本年金機構のホームページ
適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。
(参考)日本年金機構のホームページ
1) 正しい。
厚生年金保険の適用事業所に使用される70歳未満の従業員は、厚生年金保険の強制加入保険者となる。
「使用される者」とは、一般的に従業員を指すが、法人・団体の取締役・理事など法人の代表者等も、法人に対して労務を提供して、報酬が支払われるものとみなし、強制保険加入者となる。
2) 誤り。
健康保険および厚生年金保険は、「事業所に使用される者」を被保険者とすることとされている。個人事業所の事業主およびその家族については、通常、「事業所に使用される者」に該当しないため、被保険者にはならない。
(参考)個人事業所の場合、事業主およびその家族は被保険者となるのでしょうか。(日本年金機構のホームページ)
3) 誤り。
2月以内の期間を定めて使用された者で、2月以内の雇用契約が更新されることが見込まれなかったものについて、契約開始後に状況が変わり契約が更新されることが見込まれることになった場合、契約の更新が見込まれるに至った日に被保険者資格を取得することになる。
(参考)年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行(令和4年 10 月施行分)に伴う事務の取扱いに関するQ&A集(日本年金機構のホームページ)
4) 誤り。
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となる。1週間の所定労働時間よび1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方も対象である。
なお、「※特定適用事業所」「※任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する、通常の労働者の1週間の所定労働時間または、1月の所定労働日数が4分の3未満である方で、以下のすべてに該当する方も対象となる。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
※短時間労働者に対する特定適用事業所(任意特定適用事業所)の概要
特定適用事業所
令和4年10月1日から事業主が同一である一または二以上の適用事業所の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える適用事業所(法人・個人・地方公共団体等)
なお、令和6年10月1日から、令和6年10月から特定適用事業所の適用要件が常時100人を超える適用事業所から常時50人を超える適用事業所へ改正される。
任意特定適用事業所
厚生年金保険の被保険者数100人以下の企業に属する適用事業所で、「短時間労働者」が社会保険に加入することについての労使合意を行った事業所
(参考)短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構のホームページ)