今回のテーマは、「法人税額の計算」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年9月11日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年9月11日実施)【第3問】

《設 例》

製造業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2023年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
1.役員給与に関する事項
当期において、取締役のAさんに対して支給した役員給与は2023年4月分から2023年9月分までは月額900千円であったが、2023年10月分から2024年3月分までは月額1,100千円に増額した。このAさんに対する役員給与について、増額する臨時改定事由は特になく、X社は所轄税務署長に対して事前確定届出給与に関する届出書は提出していない。
2.交際費等に関する事項
当期における交際費等の金額は9,900千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり5千円以下の飲食費が300千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが5,000千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。
3.受取配当金に関する事項
当期において、上場会社であるY社から、X社が前期首から同株数保有しているY社株式に係る配当金500千円(源泉所得税控除前)を受け取った。なお、Y社株式は非支配目的株式等に該当する。
4.税額控除に関する事項
当期における「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」に係る税額控除限度額が300千円ある。
5.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額15千円・復興特別所得税額315円、受取配当金について源泉徴収された所得税額75千円・復興特別所得税額1,575円および当期確定申告分の見積納税額2,500千円の合計額2,591,890円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は2,500千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は680千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問57》 設例のX社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑥に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年9月11日実施)改題

正解 ①2,500,000  ②1,200,000 ③1,600,000 ④100,000 ⑤91,890 ⑥9,000,000

①当期確定申告分の見積納税額2,500千円は、損益計算書上、費用とされるが、法人税法上、損金算入しない

②役員給与について、定期同額給与として、損金算入できるが、増額する臨時改定事由特にない部分は算入できない。損金不算入額=(1,100千円ー900千円)×6か月=1,200千円

③交際費等の不算入額
法人税法上の交際費等
9,900千円ー300千円=9,600千円
参加者1人当たり5千円以下の飲食費は、法人税法上の交際費等には該当しない。

損金算入額
8,000千円>5,000万円×50%=2,500千円 ∴8,000千円
損金不算入額
9,600千円ー8,000千円=1,600千円
期末資本金が1億円以下の法人は、交際費等の額のうち、8,000千円以下の部分の全額、または接待飲食費の50%のいずれか多い額まで損金算入する。

④受取配当等の益金不算入額
法人が内国法人から配当等を受けた場合、損益計算書上は収益とされるが、法人税法上は一定の金額は、益金不算入となる。そして、非支配目的株式等に該当する配当等は、その金額の20%益金不算入となる。
500千円×20%=100千円を減算する。

⑤源泉徴収された所得税額および復興特別所得税は、当期の法人税額から控除することを選択する。
15千円+315円+75千円+1,575円=91,890円 を加算する。

⑥所得金額(当期利益+加算項目小計ー減算項目小計+所得税額等)
4,388,110円+5,300,000円ー780,000円+91,890円=9,000,000円

《問58》 前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。

〈資料〉普通法人における法人税の税率表
課税所得金額の区分税率
2023年4月1日以後
開始事業年度
資本金または出資金
100,000千円超の法人
および一定の法人
所得金額23.2%
その他の法人年8,000千円以下の所得金額
からなる部分の金額
15%
年8,000千円超の所得金額
からなる部分の金額
23.2%

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年9月11日実施)改題

正解:1,053,700円

《問57》⑥より、所得金額は、9,000,000円となる。
8,000,000円×15%+(9,000,000円-8,000,000円)×23.2% = 1,432,000円

300,000円>1,432,000円×20%=286,400円 ∴286,000円
1,432,000円ー286,000円ー91,890円=1,053,700円
「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」について、税額控除を選択する場合、税額控除額は、その事業年度の法人税額20%相当額が上限となる。
所得税額及び復興特別所得税は、当期の法人税額から控除する。