今回のテーマは、「老齢年金の計算」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年1月23日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年1月23日実施)【第1問】

《設 例》

X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、2024年9月に満60歳となり定年を迎える。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、以後、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定としており、可能であれば70歳まで働きたいと思っている。
妻Bさん(59歳)は、高校卒業後、X社に入社し、26歳のときに同僚であったAさんと結婚した。2人の子が独立した5年前からパートタイマーとして、スーパーマーケットで勤務している。先日、惣菜部門のパートリーダーに抜擢され、副店長からシフトを増やしてほしいと頼まれている。妻Bさんは、仕事に生きがいを感じており、Aさんと同様に、70歳まで働きたいと思っている。
Aさん夫妻は、今後の生活設計について、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんの家族に関する資料〉
(1) Aさん(本人)
・1964年9月19日生まれ
・公的年金の加入歴
1984年9月から1987年3月までの大学生であった期間(31月)は国民年金に任意加入していない。
1987年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
・1987年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
【X社の継続雇用制度の概要】
・1年契約の嘱託雇用で1日7時間(週35時間)勤務
・賃金月額は60歳到達時の60%(月額27万円)で賞与はなし
(2) Bさん(妻)
・1964年5月17日生まれ
・公的年金の加入歴
1983年4月から1990年4月まで厚生年金保険の被保険者である。
1990年5月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
・Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
【妻Bさんのパート勤務の概要】
・週18時間のパート勤務、年収95万円
・妻Bさんの勤務先は、任意特定適用事業所に該当する。

※妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
※Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問52》 Aさんが、定年後、X社の継続雇用制度を利用して厚生年金保険の被保険者として同社に勤務し、65歳で退職して再就職しない場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2023年度価額に基づいて計算するものとする。
① 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
② 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。

〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間
・総報酬制導入前の被保険者期間 : 192月
・総報酬制導入後の被保険者期間 : 317月
(2) 平均標準報酬月額および平均標準報酬額
(65歳到達時点、2023年度再評価率による額)
・総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 30万円
・総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 50万円
(3) 報酬比例部分の給付乗率

(4) 経過的加算額
$1,657円×被保険者期間の月数-□□□円×\frac{1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数}{加入可能年数×12}$
※「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。
(5) 加給年金額
397,500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2022年1月23日実施)改題・抜粋

正解 ①743,656円 ②1,330,843円

①老齢基礎年金の年金額

$795,000×\frac{449月}{480月}=743,656.249$
743,656円

老齢基礎年金の年金額=$795,000×\frac{保険料納付済月数※}{480月}$
※=保険料納付済月数=192月+317月-60月(60歳以上65歳未満)=449月

1987年3月までの大学生であった期間で任意加入していない期間(31月)および60歳以降の厚生年金保険の被保険者期間は、受給資格期間に算入する3つの期間のうち、合算対象期間となり、老齢基礎年金の年金額に反映されない。
※受給資格期間=保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間

②老齢厚生年金の年金額

・報酬比例部分の額
$300,000×\frac{7.125}{1,000}×192月+500,000×\frac{5,481}{1,000}×317月=1,279,138.5$
1,279,139円

・経過的加算額
$1,657円×480月-795,000円×\frac{449月}{480月}=51,703.75$
51,704円

・基本年金額
1,279,139円51,704円=1,330,843円

・老齢厚生年金の年金額 1,330,843円

本来水準による価額によるため、報酬比例部分の給付乗率は、総報酬制導入前、総報酬制導入後とも新乗率を用いる。

Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は、192月+317月=509月であるが、経過的加算額の計算式の前半部分(定額部分)の被保険者期間は、上限480月となる。
経過的加算額の計算式の後半部分(老齢基礎年金相当額)の被保険者期間は、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間を用いるため、509月-60月=449月となる。

□□□円は、老齢基礎年金の満額である795,000円が入る。加入可能年数は40年となる。

Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は20年(240月)以上あるが、生計維持関係にある妻Bさんは、65歳に達しているため、加給年金額は加算されない。