今回のテーマは、「相続税額の計算」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年5月23日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年5月23日実施)【第5問】
《設 例》
Aさんは、甲土地と乙土地を所有している。甲土地はAさんが所有する3階建ての賃貸アパートの敷地であり、Aさんはその賃貸アパートの3階部分を自宅として居住の用に供し、1階および2階部分は賃貸の用に供している。乙土地はAさんが所有する事業用建物の敷地であり、長女Cさんがその事業用建物をAさんから使用貸借により借り受けて雑貨店を営んでいる。
Aさんは、最近、健康に不安を感じることが多くなり、自身の相続が発生したときのことを考えるようになった。Aさんは、自身の相続が発生した後も、妻Bさんが引き続き自宅に住み続けられるように、かつ、子たちが遺産分割でもめないように遺言書を作成しておきたいと考えている。
Aさんの親族関係図およびAさんが所有している土地に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、Dさん、孫Eさんおよび孫Fさんとそれぞれ普通養子縁組(特別養子縁組以外の縁組)をしているが、Dさんは病気により既に他界している。
また、孫Gさんおよび孫Hさんは、AさんとDさんの普通養子縁組後に誕生している。
〈Aさんが所有している甲土地および乙土地に関する資料〉
(1) 甲土地(Aさんが所有している自宅兼賃貸アパートの敷地)
宅地面積 : 198㎡ 自用地評価額 : 3,600万円
借地権割合 : 60% 借家権割合 : 30%
※甲土地上にある賃貸アパートは3階建て(300㎡)であり、各階の床面積は同一である(各階100㎡)。
※3階部分はAさんが妻Bさんおよび長女Cさん家族とともに自宅として使用し、1階および2階部分は第三者に賃貸している(入居率100%)。
(2) 乙土地(Aさんが所有している事業用建物の敷地)
宅地面積 : 188㎡ 自用地評価額 : 4,000万円
借地権割合 : 60%
※乙土地上にある事業用建物は長女Cさんが無償で貸与を受けて使用している。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問63》 仮に、Aさんが現時点(2024年5月23日)において死亡した場合、《設例》の〈Aさんが所有している甲土地および乙土地に関する資料〉に基づき、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の相続税の課税価格に算入すべき①甲土地の価額と②乙土地の価額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。
なお、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用にあたって、甲土地のうち自宅に対応する部分は特定居住用宅地等、賃貸アパートに対応する部分は貸付事業用宅地等、乙土地は特定事業用宅地等にそれぞれ該当するものとし、課税価格の計算上、減額される金額の合計額が最大となるように計算すること。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年5月23日実施)【第5問】改題
甲土地
特定居住用宅地等:66㎡(198㎡×$\frac{100㎡}{300㎡}$) (甲土地上の3階部分)
貸付事業用宅地等:132㎡(198㎡×$\frac{200㎡}{300㎡}$) (甲土地上の1.2階部分)
乙土地
特定事業用宅地等:188㎡
特定居住用宅地等(330㎡まで)と特定事業用宅地等(400㎡まで)は、完全併用でき、これらを優先的に適用する。
これらと貸付事業用宅地等は完全併用できないため適用面積の調整が必要となる。
$188㎡×\frac{200}{400}+66㎡×\frac{200}{330}+貸付事業用宅地等の適用面積≦200㎡$
94㎡+40㎡+貸付事業用宅地等の適用面積≦200㎡
∴貸付事業用宅地等の適用面積は、66㎡(200㎡ー94㎡ー40㎡)
①甲土地の価額
特定居住用宅地等(66㎡)は80%減額できる。
自用地評価額$=3,600万円×\frac{66㎡}{198㎡}=1,200万円$
特例適用後の価額=1,200万円ー(1,200万円×80%)=240万円
貸付事業用宅地等(66㎡)は、50%減額できる。
自用地価額$=3,600万円×\frac{132㎡}{198㎡}=2,400万円$
貸家建付地の評価額
=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
=2,400万円×(1-60%×30%×100%)=1,968万円
特例適用後の価額
=1,968万円ー(1,968万円$×\frac{66㎡}{132㎡}×50$%)=1,476万円
甲土地の価額:240万円+1,476万円=1,796万円
②乙土地の価額
乙土地(188㎡)は特定事業用宅地等なので、80%減額できる。なお、長女Cさんが使用貸借しているので自用地として評価する。
4,000万円×(4,000万円×80%)=800万円
《問64》 仮に、Aさんが現時点(2024年5月23日)において死亡し、孫Eさんに係る相続税の課税価格が600万円、相続税の課税価格の合計額が1億2,000万円である場合、①相続税の総額および②孫Eさんの納付すべき相続税額をそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は万円単位とすること。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年5月23日実施)【第5問】改題
①相続税の総額
遺産に係る基礎控除額
3,000万円+600万円×5人=6,000万円
(内訳)妻B,長女C,養子Eと養子Fのうち一人(実子がいる場合、養子は1人のみ数に含める)、
孫G,孫H(孫G,孫HはAとDの普通養子縁組後に誕生している)
課税遺産総額
1億2,000万円ー6,000万円=6,000万円
法定相続人の法定相続分に応じた取得金額を基にした税額
妻B $6,000万円×\frac{1}{2}=3,000万円$
3,000万円×15%ー50万円=400万円
長女C,養子Eと養子Fのうち一人
$6,000万円×\frac{1}{6}=1,000万円$
1,000万円×10%=100万円
孫G,孫H
$6,000万円×\frac{1}{12}=500万円$
500万円×10%=50万円
相続税の総額
400万円+100万円×2人+50万円×2人=700万円
②孫Eさんの納付すべき相続税額
孫Eさんの算出相続税額
$700万円×\frac{600万円}{1億2,000万円}=35万円$
孫Eさんの納付すべき相続税額
35万円+35万円×0.2=42万円
「被相続人の配偶者、1親等の血族」以外の者は、相続税額の2割加算の対象となる。
なお、孫養子は代襲相続人を除いて加算対象となる。