今回のテーマは、「譲渡所得の金額の計算上の取得費」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問40
《問40》 居住者が土地・建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上の取得費に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 土地とともに取得した当該土地上の建物の取壊し費用は、当初からその建物を取り壊して土地を利用することが目的であったと認められる場合、原則として、当該土地の譲渡所得の金額の計算上の取得費に算入する。
2) 一括して購入した一団の土地の一部を譲渡した場合、原則として、その一団の土地の取得価額に、譲渡した部分の面積がその一団の土地の面積のうちに占める割合を乗じて計算した金額を譲渡所得の金額の計算上の取得費とする。
3) 相続税を課された者が、当該相続により取得した土地を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、相続税額のうち譲渡した土地に対応する分として計算した金額を譲渡所得の金額の計算上の取得費に加算することができる。
4) 自宅の建物(非事業用資産)を譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算上、取得価額から控除する減価償却費相当額は、建物の耐用年数の旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから譲渡するまでの経過年数を乗じて計算する。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合又は建物等の存する土地(借地権を含む。以下この項において同じ。)をその建物等と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額(発生資材がある場合には、その発生資材の価額を控除した残額)は、当該土地の取得費に算入する。(所得税基本通達38-1)
2 正しい。
一括して購入した一団の土地の一部を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費の額は、原則として当該土地のうち譲渡した部分の面積が当該土地の面積のうちに占める割合を当該土地の取得価額に乗じて計算した金額によるものであるが、当該土地のうち譲渡した部分の譲渡時の価額が当該土地の譲渡時の価額のうちに占める割合を当該土地の取得価額に乗じて計算した金額によっても差し支えない。(所得税基本通達38-1の2)
3 正しい。
相続税を課された者が、当該相続により取得した土地を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、相続税額のうち譲渡した土地に対応する分として計算した金額を譲渡所得の金額の計算上の取得費に加算することができる。(取得費加算の特例)
4 誤り。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する。取得費は、建物の場合には、その建物の建築代金や購入代金などの合計額がそのまま取得費になるわけではない。
建物は使用したり、期間が経過することによって価値が減少していく。
したがって、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要がある。
事業に使われていなかった場合
建物の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨てる。)に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算する。
(参考)No.3261 建物の取得費の計算(国税庁ホームページ)