今回のテーマは、「保険契約者保護機構」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問題10

《問10》 保険契約者保護機構に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1) 国内で事業を行うJA共済等の各種共済、少額短期保険業者は、募集する共済等の種類に応じて生命保険契約者保護機構または損害保険契約者保護機構に加入しなければならない。
2) 生命保険契約者保護機構による補償の対象となる生命保険契約のうち、年金原資が保証されている変額個人年金保険については、高予定利率契約を除き、生命保険会社破綻時の年金原資保証額の90%まで補償される。
3) 損害保険契約者保護機構による補償の対象となる損害保険契約のうち、任意加入の自動車保険については、損害保険会社破綻後3カ月以内に保険事故が発生した場合、支払われるべき保険金の全額が補償される。
4) 損害保険契約者保護機構による補償の対象となる損害保険契約のうち、傷害保険や所得補償保険は、高予定利率契約を除き、損害保険会社破綻時の責任準備金等の80%まで補償される。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)

正解:3

それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

各種共済や少額短期保険業者、特定保険事業者等は、生命保険契約者保護機構または損害保険契約者保護機構の会員ではないため、保護の対象にならない
なお、全労済、JA共済、都道府県民共済等の制度共済は、独自の補償制度がある。

2 誤り。

生命保険契約者保護機構では、再保険を除く、国内の元受保険契約(財形保険も同様)で、運用実績連動型保険契約の特定特別勘定部分以外について、破綻時点の責任準備金等の90%(ただし、高予定利率契約は除く)が補償される。

生命保険会社の保険契約者保護制度においては、保険金・年金等の90%が補償されるものではなく、個人変額年金保険に付されている年金原資保証額等についても、その90%が補償されるものではない。

(参考)生命保険契約者保護機構のホームページ

高予定利率契約とは

破綻時に過去5年間常に予定利率基準利率(注1)を超えていた契約(注2)を高予定利率契約という。当該契約については、責任準備金等の補償限度が以下のとおりとなる。ただし、破綻会社に対して資金援助がなかった場合の弁済率が下限となる。

 高予定利率契約の補償率 = 90%-{(過去5年間における各年の予定利率-基準利率)の総和÷2}

  • (注1)基準利率は、全生命保険会社の過去5年間の年平均運用利回りを基準に、金融庁長官及び財務大臣が定めることとなっている。現在の基準利率は、3%となっている。この基準利率は、全生命保険会社の年平均運用利回りの状況により、見直される。
  • (注2)一つの保険契約において、主契約・特約の予定利率が異なる場合、主契約・特約を予定利率が異なるごとに独立した保険契約とみなして、高予定利率契約に該当するか否かを判断することになる。
    また、企業保険等において被保険者が保険料を拠出している場合で被保険者毎に予定利率が異なる場合には、被保険者毎に独立の保険契約が締結されているものとみなして高予定利率契約に該当するか否かの判断をすることになる。ただし、確定拠出年金保険契約については、被保険者が保険料を拠出しているか否かにかかわらず、被保険者毎に高予定利率契約に該当するか否かを判断することになる。

(参考)生命保険契約者保護機構のホームページ

3 正しい。

任意加入の自動車保険については、損害保険会社破綻後3カ月以内に保険事故が発生した場合、支払われるべき保険金の全額が補償される

4 誤り。

傷害保険や所得補償保険は、高予定利率契約を除き、損害保険会社破綻時の保険金支払の90%まで補償される

(参考)