今回のテーマは、「遺言」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)問題44

《問44》 民法における遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1) 遺言執行者は、自己の責任で第三者に遺言執行の任務を行わせることができるが、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

2) 遺言者の相続開始前に受遺者が死亡していた場合、原則として、受遺者に対する遺贈や停止条件付きの遺贈は効力を生じないが、当該受遺者に子があるときは、その子が代襲して受遺者となる。

3) 公正証書遺言を作成していた遺言者が、公正証書遺言の内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。

4) 遺言者は、遺言により1人または複数人の遺言執行者を指定することができ、その指定を第三者に委託することもできるが、未成年者および破産者は遺言執行者となることができない。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

なお、「遺言」については、これまでに本ブログでも取り上げている。→こちらから

1 正しい。

遺言執行者とは、遺言の執行のために指定または選任された者である。

そして、遺言執行者は、遺言者の遺言または遺言で指定の委託を受けた者の指定によって決定する。
また、利害関係人の請求で、家庭裁判所が選任する場合もある。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民法1012条1項)権利義務の範囲は、遺言の内容によって定まる。

遺言執行者の職務は、広範に及び、高度な法律知識を要することも少なくない。そこで、適切な執行のために、遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることもできる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。民法1016条1項)

2 誤り。

遺贈とは、遺言による財産の無償供与のことである。

受贈者は、遺言者たる被相続人が死亡した時に生存している必要がある。生存していなければ、遺贈は無効になる。すなわち、受贈者に対する代襲相続は生じない

3 正しい。

遺言の撤回は自由にできるが、原則として遺言の方式によらなければならない。ただし、先に作成した遺言と同じ形式である必要はない。公正証書遺言を後で自筆証書遺言で撤回しても差し支えない。

なお、前の遺言と後の遺言が抵触する部分は撤回したものとみなされる

4 正しい。

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。(民法1006条1項)

なお、未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。(民法1009条)

(参考)民法VI 親族・相続〔第6版〕 (LEGAL QUEST)  (有斐閣)