今回のテーマは、「労働者災害補償保険」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)問題2

《問2》 労働者災害補償保険に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1) 労働者が勤務先から帰宅途中に通勤経路から逸脱し、スーパーで日用品を購入後、通勤経路に戻ってから負傷した場合、その逸脱・中断が日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合、その負傷は通勤災害に該当する。

2) 労働者が出張先から帰宅途中に負傷した場合、出張の過程全般について事業主の支配下にあり、積極的に私的行為を行うなど特段の事情がない限り、その負傷は通勤災害に該当する。

3) 派遣労働者が、派遣先で生じた業務災害により療養補償給付を受けようとする場合、派遣先の事業を労働者災害補償保険の適用事業として、療養補償給付に係る請求書に派遣先事業主の証明を受ける必要がある。

4) 複数の会社に勤務する複数事業労働者の休業補償給付の額は、原則として、業務災害が発生した勤務先の賃金に基づいて計算した給付基礎日額の100 分の60 に相当する額となる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 正しい。

当該逸脱または中断が日常生活必要な行為であって、次に該当するものをやむを得ない事由により行う最少限度のものである場合、当該逸脱または中断を終え合理的経路および方法に戻った後は通勤と認められる

  • 通勤経路上の理髪店に立ち寄る行為
  • 日用品の購入など
  • 通勤途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合

2 誤り。

業務災害(業務上の事由による労働者の負傷、疾病、傷害または死亡)は、①業務遂行性と②業務起因性を満たした場合認められる。

業務遂行性とは、労働者が事業主の支配下にある状態をいい、次のような場合に認められる。

  • 事業場の敷地内(業務に従事している)
  • 事業場の敷地外(業務に従事している)
  • 事業場の敷地内(業務には従事していない)

業務起因性とは、傷病等が業務と相当因果関係があることをいう。
業務起因性を認められるためには、前提条件として①業務遂行性が認められなければならない。

そして、出張中における移動中の負傷は業務災害となる。

3 誤り。

派遣労働者に係る労働保険の適用は、派遣元事業主が適用事業となり、その保険給付請求書の証明は派遣元事業主が行う。

4 誤り。

休業補償給付の額は、療養のため4日以上会社を休み、賃金が支給されないときに休業4日目から給付基礎日額の60%が支給される。

複数事業労働者の場合は、それぞれの勤務先ごとに計算した給付基礎日額に相当する額を合算した額が給付基礎日額となる。

なお、業務災害の場合は、3日目までは事業主が休業補償を行う。

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