今回のテーマは、「借地借家法の定期借地権および定期建物賃貸借契約(定期借家契約)」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)問題35

《問35》 借地借家法の定期借地権および定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 存続期間を10年以上30年未満とする事業用借地権を設定する場合、設定契約時に契約の更新および建物の築造による存続期間の延長がなく、建物の買取請求権を排除する旨を特約として定める必要がある。

2) 建物譲渡特約付借地権は、借地権設定後30年以上が経過し、その建物を借地権設定者が譲り受けることにより借地権は消滅するが、建物を使用している借地権者が当該借地権消滅後の建物の使用継続を請求したときは、建物の賃借人として当該建物を使用継続することができる。

3) 定期建物賃貸借契約の期間が1年である場合、賃貸人が当該契約日の8カ月後に、初めて賃借人に期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしたときは、通知の日から4カ月経過後に契約の終了を賃借人に対抗することができる。

4) 期間の満了により建物の定期建物賃貸借契約が終了した場合、定期建物賃貸借契約の更新は行われず、再契約は契約が終了した日から1年を経過しなければ締結することができない。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年1月22日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。
なお、「借地借家法」については、本ブログでも過去に取り上げている。

1 誤り。

存続期間を10年以上30年未満とする事業用借地権を設定する場合、本肢にあるような特約を定める必要はない。

事業用定期借地権等には、もっぱら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的として、借地権の存続期間を30年以上50年未満として設定される事業用定期借地権長期型)と借地権の存続期間を10年以上30年未満として設定される事業用借地権短期型)の2つがある。

事業用定期借地権長期型)は、設定契約は公正証書に限られる。
なお、30年以上の存続期間があるため、普通借地権に一般定期借地権と同様の3項目(①更新がない、②建物の再築による存続期間の延長はしない、③建物買取請求権がない)を特約として借地権設定契約に定めることで成立する。(借地借家法23条1項)

事業用借地権短期型も設定契約は公正証書に限られる。
ただし、30年未満の契約のため、普通借地権の設定契約に特約をすることはできない。(借地借家法23条2項)そして、更新に関する規定、建物の再築による存続期間の延長建物買取請求権の規定の適用が自動的に排除され、結果的に存続期間満了時に土地は更地で返還される。なお、土地の返還時に土地所有者が建物を買い受けることに合意することは差し支えない。

2 正しい。

建物譲渡特約付借地権とは、借地権の存続期間を30年以上として設定し、借地権設定から30年以上を経過した日に、借地上の建物を土地所有者に相当の対価で譲渡する旨を特約で定めるものである。

そして、この特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人で借地権の消滅後建物の使用を継続している者が請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者(土地所有者)との間で期間の定めのない賃貸借がされたものとみなされる。
この場合、建物の賃料は、当事者の請求により、裁判所が定める。(借地借家法24条)

3 誤り。

定期建物賃貸借契約とは、
更新がなく一定期間で契約が終了する建物賃貸借契約である。
借家期間は1年未満でもよく最長期間の制限もない。
契約を締結する際には、公正証書の書面(または、電磁的方法)で行う必要がある。

賃貸人は、契約締結に、賃借人に対して、「契約の更新がなく、期間満了で終了する」旨を記載した書面(または、電磁的方法)で説明しなければならないこの説明がないと普通借家契約となる

1年以上の期間の契約では、賃貸人は、期間終了の1年前から6箇月前までに、賃貸借が終了する旨を賃借人に通知しなければならない。この通知を怠れば、賃貸借の終了を賃借人に対抗できない。
なお、賃貸人が通知期間の経過後にこの通知をした場合は、通知後6箇月を経過した時点で賃貸借は終了する。(借地借家法38条)

4 誤り。

定期建物賃貸借契約には更新はない。ただし、期間満了後に当事者間で再度定期建物賃貸借契約を締結することは差し支えないそして、この再契約については何も制限はない。

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