今回のテーマは、「不動産の売買契約に係る民法の規定」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)問題43
問題 43
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1.売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。
2.不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者の同意を得る必要はない。
3.売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
4.売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを知りながら、売買契約の目的物を買主に引き渡した場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、契約の解除をすることができない。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。
なお、「不動産の売買契約」については、本ブログでも過去に取り上げている。
1 正しい。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。(民法536条1項)
危険負担とは、契約成立後、各債務が完全に履行される前に、一方の債務が当事者の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合に、反対債務の履行がどうなるかを扱うものである。そして、この制度では、反対債務の履行を拒絶することができるかどうかが問題となる。
危険負担は、原則として、債務者主義と規定されている。本肢では、売主=債務者なので、買主=債権者は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。
(債務者の危険負担等) 第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。 (略)
2 正しい。
共有持分を譲渡するときは、他の共有者の同意を得なくても単独で譲渡できる。
なお、共有物全体を譲渡するときは、共有者全員の同意が必要となる。
3 正しい。
債務の全部の履行が不能である場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
(民法542条1項1号)
したがって、本肢では、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
(催告によらない解除) 第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 一 債務の全部の履行が不能であるとき。 (略) 民法・e-Gov法令検索
4 誤り。
契約不適合責任の期間
民法の規定では、買主は、種類又は品質に関して売主の担保責任を追及するには、「不適合の事実(瑕疵)を知った日から1年以内に、売主に通知する」ことになる。特約により、期間を短くしたり、責任を免除することができる。ただし、売主が不適合の事実を知りながら、買主に告げなかったときは責任を負う。(民法第566条)
したがって、本肢の場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知するしないにかかわらず、売主の担保責任を追及することができる。
FP先生
担保責任とは
特定物(不動産など)の売買において、目的物が契約不適合であった場合に、売主が負わなければならない責任のことです。
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限) 第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
契約不適合責任
民法上、売主が買主に引き渡すべき契約の目的物が、種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないものである場合は、買主は売主に修補・代替物の引き渡し・不足分の引き渡しを求めることができる。(追完請求権)(民法第562条)
買主は相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないとき、代金減額を請求できる。(代金減額請求権)(民法第563条)
また、買主は、損害賠償請求や、契約の解除することもできる。(民法第564条)
(参考文献)’22~’23年版 最短合格2級FP技能士(きんざい)、C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (LEC東京リーガルマインド)