今回は、生命保険の基礎知識として、「保険料の仕組み」」と「保険の剰余金と配当金」を取り上げる。なお、本稿は、2022年(令和4年)9月現在の情報に基づいている。それでは、過去問で問われたポイントを中心にみていこう。

大数の法則と収支相等の原則

大数の法則

個々の事故は偶発的であっても、繰り返し大量に観察すると一定の法則を見出すことができる。過去のデータから性別・年齢別の死亡率を求め保険料を算定する。

収支相等の法則

払込保険料総額 + 運用益 = 支払保険金総額 + 経費」となるように保険料を算定する。

保険料の仕組み

営業保険料の概要

営業保険料
・契約者が払い込む金額
純保険料
・将来の保険金支払の財源となる
予定死亡率予定利率に基づき算出
付加保険料
・保険事業を維持・管理するための費用
予定事業費率に基づき算出
死亡保険料
・死亡保険金を支払う財源
生存保険料
・満期保険金を支払う財源
営業保険料の概要

保険料算定の基礎率

予定死亡率性別・年齢別の死亡者数を予想し、将来の保険金などの支払いに充てるための必要額を算定する。
死亡保険では、死亡率を低く見込むと保険料は安くなる
生存保険では、死亡率を低く見込むと保険料は高くなる
予定利率資産運用による一定の収益をあらかじめ見込んで、その分保険料を割り引く。
予定利率を高く見込むと保険料は安くなる
予定事業費率事業運営に必要な諸経費をあらかじめ見込んでいる。
・予定事業費率を低く見込むと保険料は安くなる
保険料算定の基礎率

保険料の比較

  • 保険料の払込期間、保障額、加入時年齢、保障期間が同じである場合、保険料は、「定期保険 < 養老保険」となる。
  • ほかの条件を同一とした場合、告知の有無や告知項目数により、保険料は、「通常の保険<限定告知型保険<無選択型保険」となる。
  • 終身保険や終身医療保険の場合、終身払いよりも有期払いのほうが払込1回あたりの保険料は、高くなる。
  • 一般的には、終身保険では女性のほうが保険料が安く、終身年金・終身医療保険では、女性のほうが保険料は高い

保険の剰余金と配当金

保険の剰余金

死差益実際の死亡率が、予定死亡率より低くなった場合に生じる利益(予定死亡率>実際の死亡率
利差益実際の運用利益が、予定利率に基づく収益より多くなった場合に生じる利益
予定利率< 実際の運用利益
費差益実際の事業費が、予定事業費率によって見込まれた事業費を下回った場合に生じる利益
予定事業費率 > 実際の事業費
保険の剰余金

保険会社は、保険料から生じる剰余金(死差益利差益費差益)の一部を配当金として契約者に還元する。(保険期間中に受け取る配当金は課税されず保険料控除の対象保険料から控除する。)

保険の配当金

有配当保険3利源配当タイプ死差益利差益費差益を配当金として分配する保険。
利差配当タイプ利差益のみを配当金として分配する保険。
無配当保険予定基礎率を実際の数値に近づけて保険料を算出して、剰余金を分配しない保険。
配当金による保険種類の分類

それでは、これまで見てきたポイントを過去問で確認してみよう。

過去問にチャレンジ

問題 11

生命保険の保険料等の一般的な仕組みに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.保険料は、大数の法則および収支相等の原則に基づき、予定死亡率、予定利率および予定事業 費率の3つの予定基礎率を用いて算定される。

2.保険料は、将来の保険金・給付金等の支払い財源となる純保険料と、保険会社が保険契約を維持・管理していくために必要な経費等の財源となる付加保険料で構成される。

3.所定の利率による運用収益をあらかじめ見込んで保険料を割り引く際に使用する予定利率を低く設定した場合、新規契約の保険料は高くなる。

4.保険会社が実際に要した事業費が、保険料を算定する際に見込んでいた事業費よりも多かった場合、費差益が生じる。

2022年9月試験 2級学科試験

正解:4

1 正しい。

2 正しい。

3 正しい。

4 費差益が生じるのは、「予定事業費>実際の事業費」の場合である。

参考文献’22~’23年版 最短合格2級FP技能士(きんざい)、史上最強のFP2級AFPテキスト22-23年版(ナツメ社 )、うかる! FP2級・AFP 王道テキスト 2022-2023年版 (日本経済新聞出版)