今回のテーマは、「株式投資と財務分析」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年9月12日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年9月12日実施)【第2問】
《設 例》
Aさん(50歳)は、上場株式への投資を行いたいと考えている。Aさんは、同業種の国内企業であり、東京証券取引所市場第一部に上場しているX社およびY社に興味を持ち、連結財務諸表などから作成した財務データ等を参考にして投資判断を行いたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
〈X社とY社の株式に関するデータ〉
X社:株価3,600円、発行済株式総数8億株、1株当たり配当金95円(年間)
Y社:株価1,200円、発行済株式総数2億5,000万株、1株当たり配当金34円(年間)
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問54》 《設例》の〈X社とY社の財務データ〉および〈X社とY社の株式に関するデータ〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~⑤に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
Ⅰ 「株式投資の代表的な評価指標である( ① )は、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、財務レバレッジの3指標に分解して、要因分析を行うことができます。
X社とY社の( ① )の値を比較すると、( ② )社の値のほうが上回っています。( ② )社の値が上回る主な要因は、3指標のうち、( ③ )によるものであると考えられます」
Ⅱ 「X社とY社を財務的な安定性を測る指標であるインタレスト・カバレッジ・レシオで比較すると、X社の値が( ④ )倍、Y社の値が□□□倍です。両社ともに財務的な余裕があるといえます」
Ⅲ 「X社とY社を株主への利益還元の度合いを測る指標である配当性向で比較すると、X社の値が( ⑤ )%、Y社の値が□□□%であり、X社の値がY社の値を上回っています」
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2021年9月12日実施)【第2問】改題
①ROE(自己資本当期純利益率)とは
自己資本を使ってどれだけ最終利益を上げているのかを見る指標。その会社の収益力を表す。
ROE=売上高当期純利益率×使用総資本回転率×財務レバレッジ
②ROE(自己資本当期純利益率)(%)=$\frac{当期純利益}{自己資本}×100$
自己資本=純資産ー新株予約権ー非支配株主持分
または、
自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額
X社のROE=$\frac{188,000百万円}{1,900,000百万円-4,000百万円-66,000百万円}×100=10.273$%
Y社のROE=$\frac{42,500百万円}{350,000百万円-27,000百万円}×100=13.157$%
したがって、Y社の方が上回っている。
③売上高当期純利益率(%)=$\frac{当期純利益}{売上高}×100$
X社の売上高当期純利益率=$\frac{188,000百万円}{3,500,000百万円}×100=5,371$%
Y社の売上高当期純利益率=$\frac{42,500百万円}{780,000百万円}×100=5,448$%
使用総資本回転率(回)=$\frac{売上高}{使用総資本}$
なお、使用総資本は、「資産の部合計」である。
X社の使用総資本回転率=$\frac{3,500,000百万円}{3,600,000百万円}=0.972$回
Y社の使用総資本回転率=$\frac{780,000百万円}{830,000百万円}=0.939$回
財務レバレッジ(倍)=$\frac{使用総資本}{自己資本}$
X社の財務レバレッジ=$\frac{3,600,000百万円}{1,900,000百万円-4,000百万円-66,000百万円}$
=1.967倍
Y社の財務レバレッジ=$\frac{830,000百万円}{350,000百万円-27,000百万円}$
=2.569(倍)
以上により、Y社の値が上回る主な要因は、3指標のうち、財務レバレッジによるものであると考えられる。
④インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=$\frac{事業利益}{金融費用}$
事業利益=営業利益+受取利息及び受取配当+有価証券利息+持分法による投資利益
金融費用=支払利息及び割引料+社債利息
X社のインタレスト・カバレッジ・レシオ=$\frac{380,000百万円+6,000百万円+4,000百万円}{9,000百万円}=43.333$
43.33倍
⑤配当性向とは
当期純利益に対する年間配当金の割合を示す。数値が高いほど、利益還元の度合いが高い。
配当性向(%)=$\frac{配当金総額}{当期純利益}×100$
X社の配当性向=$\frac{76,000百万円}{188,000百万円}×100=40.425$
40.43%