今回のテーマは、「相続税の延納および物納」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問47》

《問47》 相続税の延納および物納に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

1) 相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が50%以上であり、延納税額が90万円ある場合、延納税額の延納期間は、最長9年となる。
2) 延納の担保は、相続または遺贈により取得した財産に限られず、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保に提供することができる。
3) 相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった当該財産の価額となる。
4) 共有物である不動産は、共有者全員が物納の許可の申請をする場合、物納に充てることができる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)

正解:3

1 正しい。

延納期間
延納期間は、相続財産に占める不動産等の割合に応じて定められている。

相続税・贈与税延納の手引(左ページ)
相続税・贈与税延納の手引

(引用)相続税・贈与税延納の手引(国税庁(令和5年1月))

本肢の場合、不動産等の価額が占める割合が50%以上で、延納税額が150万円未満であるので、延納期間は、90万円÷10万円=9年となる。

2 正しい。

延納の担保は、相続または遺贈により取得した財産に限られず、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保に提供することができる。

3 誤り。

相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請時の価額となる。(相続税法48条の2第5項)

(特定の延納税額に係る物納)
第48条の2
(略)
 特定物納に係る財産の収納価額は、当該特定物納に係る申請の時の価額による。ただし、税務署長は、収納の時までに当該財産の状況に著しい変化が生じたときは、収納の時の現況により当該財産の収納価額を定めることができる。

相続税法・e-Gov法令検索

4 正しい。

共有物である不動産は、共有者全員が物納の許可の申請をする場合、物納に充てることができる。
(相続税法施行規則21条5項)

(物納の要件)
第41条
 (略)
 前項の規定による物納に充てることができる財産は、納税義務者の課税価格計算の基礎となつた財産(当該財産により取得した財産を含み、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を除く。)でこの法律の施行地にあるもののうち次に掲げるもの(管理又は処分をするのに不適格なものとして政令で定めるもの(第四十五条第一項において「管理処分不適格財産」という。)を除く。)とする。

 不動産及び船舶
(略)

相続税法・e-Gov法令検索

(管理処分不適格財産)
第18条 法第41条第2項に規定する政令で定める財産は、次の各号に掲げる財産の区分に応じ当該各号に定めるものとする。

 不動産 次に掲げるもの
(略)
 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含む。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産として財務省令で定めるもの

相続税法施行令・e-Gov法令検索

管理処分不適格財産
第21条 (略)
 施行令第18条第1号トに規定する財務省令で定める不動産は、次に掲げるものとする。

 二以上の者の共有に属する不動産で次に掲げる不動産以外のもの

 当該不動産の全ての共有者が当該不動産について物納の許可の申請をする場合における当該不動産

 私道の用に供されている土地(一体となつてその効用を有する他の土地とともに物納の許可の申請をする場合における当該土地に限る。)

相続税法施行規則・e-Gov法令検索

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