今回のテーマは、「民法における不動産の賃貸借」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問35》

《問35》 民法における不動産の賃貸借に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1) 建物の賃貸借期間中に、賃借人から敷金を受け取っている賃貸人が建物を譲渡し、賃貸人たる地位が建物の譲受人に移転した場合、その敷金の返還に係る債務は建物の譲受人に承継される。
2) 建物の賃貸人に敷金を支払っている賃借人は、賃貸借期間中に未払賃料がある場合、賃貸人に対し、その敷金を未払賃料の弁済に充てるよう請求することができる。
3) 建物の賃借人から敷金を受け取っている賃貸人は、賃貸借が終了し、建物の返還を受ける前に、賃借人に対し、その敷金の額から未払賃料等の賃借人の賃貸人に対する債務額を控除した残額を返還しなければならない。
4) 建物の賃借人が、当該建物に通常の使用および収益によって損耗を生じさせた場合、賃貸借の終了時、賃借人は当該損耗を原状に復する義務を負う。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。

1 正しい。

建物の賃貸借期間中に、賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。(民法605条の2第4項)

2 誤り。

賃借人は、賃貸借存続中に賃料債務その他の賃貸借基づいて生じた金銭債務の支払いが困難になったとしても、敷金を賃料債務の弁済に充当するよう主張することはできない。(民法622条の2第2項後段)

3 誤り。

敷金返還請求権は、賃貸物の返還時に発生する。(民法622条の2第1項1号参照)すなわち、賃貸物の返還が先履行となる。

4 誤り。

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。(民法621条)
ただし、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化(通常損耗)については、現状に復する必要はない。(同条本文かっこ書)